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2006年10月05日

ノルマ達成へ、債権回収競争 破産隠し保険金請求

◇死亡顧客、住民票で確認

 消費者金融が借り手全員に生命保険を掛けていた問題で、大手の1社が自己破産後に死亡した顧客を住民票で確認し、生命保険会社に保険金を請求して債権を回収していたことが分かった。自己破産者の債務は法的に免責されており、業界団体も問題視している。この大手を含め、業界では今後は保険をやめる動きが相次いでいるが、これまで行われてきた安易な債権回収の実態が改めて問われそうだ。【多重債務取材班】

 関東地方の元大手社員の30代男性は、支店を経て本社の債権回収部門に勤務した。20以上の班に分かれ、各班には毎月1500万〜1600万円の回収ノルマが課された。12月には翌年の3月期決算に向けて回収額の上積みが求められたという。

 この際、自己破産者など一般顧客と異なる借り手だけを記載した「別管」と呼ばれる台帳も利用。顧客の住民票を役場に請求し、死亡が確認できれば保険金を請求したという。破産法によると、自己破産した人の債務は免責され、本人が任意で支払う場合以外は取り立てられない。元社員らは「厳しい債権回収ノルマを達成するためだった。保険会社に破産者と知らせたら保険がおりないと思い、黙っていた。他の書類が整っていれば機械的に保険がおりた」と証言する。

 全国貸金業協会連合会(東京都港区)は「自己破産が確定した時点で業者は債権を放棄するので保険請求は通常ではあり得ない」としている。

 98年に自己破産した宮城県内の男性(38)は04年、この大手が役場に住民票を請求したことを知った。近くに住む自己破産した親族も住民票を請求されていた。男性は「私たちが死んでも追いかけてくると思うと、恐ろしい」と話している。

 また元社員らによると、死亡の可能性が高い高齢者の顧客リスト「昭和一桁(ひとけた)台帳」も使って集中的に住民票を請求し、死亡確認をしていた。元社員の一人は「死亡していれば保険金が入るため、社内では『生命保険』ではなく『死亡保険』と言っていた。班対抗で必死の保険金獲得競争をさせられたので、スポーツのリーグ戦に例えて『デッド(死の)リーグ』と呼んでいた」と言う。

 司法統計によると個人の自己破産の申し立ては、85〜90年まで1万件前後だったが以後急増。03年は史上最多の24万件を突破し、05年速報値でも18万4324件。

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 情報をお寄せください。ファクス(03・3212・0635)、Eメール t.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp〒100−8051 毎日新聞社会部多重債務取材班。

毎日新聞 2006年10月5日 東京朝刊
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2006年10月06日

消費者信用団体生命保険 金融庁実態調査

命が担保…消費者金融17社、保険金300億円受領


金融庁は6日、消費者金融会社が借り手に加入させている「消費者信用団体生命保険」について、初の実態調査の結果を発表した。

 2005年度は大手を中心に17業者が契約し、借り手の死亡に伴って消費者金融側が受け取った保険金は計302億円、件数は延べ5万1997件に上った。

 借り手の加入者数は延べ1344万人で、無担保無保証の融資に対する加入割合は約95%に上る。

 借り手の「命を担保」に保険金を受け取っているとの批判が強い「自殺」に伴う支払額は、「死因不詳」を除けば2番目に多い43億円で、件数は4908件と9・4%を占めた。1件あたりの支払い保険金額は病死・事故は62・3万円だが、自殺は87・1万円と多かった。

 少額の支払いなどでは、死亡診断書の提出を省くことができるケースが多いため、半数以上の2万7207件(52・3%)で死因は判明していない。死因がわかっている中では、「病死」が件数、額とも最も多く105億円、1万6847件(32・4%)、3番目は「事故」で11億円、1788件(3・4%)だった。

 死因がわかっている分に限ると、「自殺」の割合は、19・8%となる。04年度の人口動態統計(20〜59歳)では、死亡原因のうち自殺が15・29%を占めているが、金融庁は、「一般的な割合と比較して、借り手の自殺が多いか少ないかという判断は難しい」としている。

(2006年10月6日22時18分 読売新聞)


「借り手保険」アコムも廃止

消費者金融大手のアコムは5日、借り手が死亡した場合に備えて加入している「消費者信用団体生命保険」を11月30日付で解約すると発表した。12月1日以降は、新規加入手続きも行わない。「貸金業者が保険金を目当てに厳しい取り立てを行い、借り手を自殺に追い込んでいる」との批判が高まったことに対応した。大手ではプロミスがすでに解約しており、武富士も解約を決めている。

(2006年10月6日 読売新聞)
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2006年10月07日

うつ80歳に過剰ローン クレジット3社、立て替え契約

◇呉服3200万円分

 東京の大手呉服販売業者が年金で暮らす埼玉県のうつ病の女性(80)に対し、大手クレジット3社の立て替え払い契約で8年間に96件約3200万円の着物などを売り、女性が多重債務に陥っていたことが分かった。割賦販売法はクレジット会社が顧客の支払い能力を超える過剰与信をしないよう定めているが、消費者金融だけでなく、クレジット業界でも多重債務防止策が機能していない実態が明らかになった。【多重債務取材班】

 代理人の弁護士によると、女性は89年ごろから呉服会社の販売員に展示販売に誘われた。既にうつ病などで通院していたが、98年ごろから物忘れもひどくなる。00年に夫と死別し1人暮らしだ。

 03年、姉に「100万円貸して」と連絡。不審に思った女性の二男が自宅を調べたところ、大量の呉服がみつかった。夫の遺産や預貯金は底をつき、病院に行く金もない。クレジット3社には約350万円の債務があり、販売員が商品購入のために貸し付けた980万円の借用書もあった。

 クレジットによる購入品は96年から03年までの判明分だけで小紋や帯、宝石、バッグなど96点。そのうち9割が未開封で、着物には仕付け糸がついたまま。女性は「販売員に旅行に連れて行ってもらったりして、断りきれなかった」と話し、契約については「いつどこでいくらで買ったか覚えていない」という。

 割賦販売法38条は、クレジット会社が顧客の契約情報を収集する信用情報機関などを利用し、顧客の支払い能力を超える契約を行わないよう定めている。この3社が加盟する信用情報機関最大手の株式会社シー・アイ・シー(CIC)は02年4月以降、加盟社に契約時の全件登録と全件照会を義務づけている。

 女性の代理人の池本誠司弁護士は「全件照会が守られていれば、年金生活者が次々と呉服を買っていると分かるのに、なぜ過剰なローンを組んだのか。CICが何のためにあるのか分からない」と指摘。これに対し、CIC広報担当は「我々はクレジット会社が顧客を審査するための参考情報を登録しているだけ。何を過剰与信とするかは各社が判断する」と話す。

 女性は04年、呉服会社などに約3200万円の損害賠償を求め、さいたま地裁川越支部に提訴した。

 ◇防止規定に罰則はなく

 クレジット契約では、住宅リフォームや呉服販売など商品を提供する業者の悪質さが指摘されているが、こうした業者と加盟店契約を結ぶクレジット会社の責任も大きい。過剰与信は多重債務急増の大きな要因となっている。

 日本クレジット産業協会の推計によると、クレジット会社の利用額は04年度、40兆円台に乗った。消費者金融の貸出総額の約4倍。一方で全国の消費生活センターに寄せられるクレジット関連の相談は05年度で約14万件にのぼる。ずさんな審査で低収入者が支払い不能な契約を結ばされるケースが後を絶たない。

 割賦販売法の過剰与信の防止規定には罰則がない。消費者金融業界には過剰融資を防ぐために融資上限額のガイドラインがあるが、クレジット業界はこうした基準すら設けていない。開会中の臨時国会では貸金業の規制強化が審議されているが、クレジット問題への対策も不可欠だ。

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 情報をお寄せください。ファクス(03・3212・0635)、Eメール t.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp 〒100−8051 毎日新聞社会部多重債務取材班。

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 ■ことば

 ◇過剰与信

 クレジット(信用)契約で物品やサービスを売買する場合、クレジット会社は顧客に信用を与え、売り手に代金を一括で立て替え払いする。これを「与信」という。この際、個人の債務データなどを管理する個人信用情報機関にデータを照会、審査するが、ここで顧客の返済能力を超えた契約を結ぶと「過剰与信」となる。

毎日新聞 2006年10月7日 東京朝刊
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